「葉月くん!早く〜!!」

が俺の手を引っ張って、嬉しそうに駆け出した
学年末考査が終わった試験休み
今日は二人で、ディズニーはばたきランドへ来ている


「開園と同時に乗りたいアトラクションに並ぶから、ついてきてよ!」

そう、前の日から張り切っていた
おまえのテンション、この場所だとさらに高いだろ・・・
そうやって、何の違和感も無く俺の手を引いてるけど
俺の気持ち・・・とか、考えたり・・・・・しないだろうな
何しろ、・・・前置きで「超」がつくほどに、おまえは鈍感だから

アトラクションに並んでいる間、俺たちは「くだらない話」をする
それは、何の必要も無い、ただの「くだらない話」
誰かが俺たちの会話を聞いても、きっと、何の興味も湧かないだろう

だけど、それが、俺たちの・・・二人だけの会話だと思うと
俺は・・・、柄にも無く笑ったり
似合わない冗談を言ったり・・する
のペース・・・、巻き込まれてる・・俺


朝早くから、全てのアトラクション制覇を目指して、俺たちは駆け回った
普段なら、決して被る事の無いディズニーキャラクターの帽子
二人でお揃いで被ってると
全然恥ずかしくないから・・・・不思議だな


「あのね、お昼はアリスのお店でチキンを食べるの」

「ねえ、私ね、ミッキーのワッフル食べたいの」

「あ!忘れてた、チュロスの限定味、今しか食べられないから買わなくちゃ!」

は、そう言って、全部決まった事のように俺を連れまわし
嬉しそうに、本当に幸せそうに、食べ続ける

でも、おまえ・・・食いすぎ・・・


夕方になって、少し肌寒くなってきて
俺たちは、室内をブースが移動するお化け屋敷みたいなアトラクションに並んだ
前の人に続いて、暗がりを歩いてゆき
ブラックライトに照らされた中で、小さな箱に乗り込んだ

怪しげな音楽の中を進んでゆくと、は少し怖いのか
それともわざとなのか
俺の手を、ぎゅっと握り締めてきた

「ねえ、ここってさ、幽霊がいっぱいいるんだよね」
「・・・ああ」

「でね、最後に一緒に乗り込んだ幽霊は、くっついてきちゃうから気をつけなくっちゃ」
「・・・ぷっ」

「あ、なんで笑うの?」
「幽霊・・・お客について出かけたら、一日でここは空になる・・・だろ?」

「・・・・そうか!じゃ、大丈夫だね!」

は少し「ほっ」としたように声を弾ませた

「・・おまえ、ここ、怖い?」
「うん、怖いよ、暗いし」

「・・・で、俺の手・・・握ってる・・・?」
「・・・ん?あ、これは」

「・・・これは?」

は、言葉に詰まってしまったのか、いつものような「即答」が来ない
俺は、急に胸の高鳴りを感じてしまった
いつも、何の違和感も無く手を繋いでいる事が
手の温かみが、特別な物に感じてきたから

「これはね・・・」
「・・・・」

胸の中で、どんどん大きくなる鼓動
俺の気持ち・・・、この心臓の音と共に
に聞こえてしまう・・・やばい


いつもの間合いじゃない、明らかな沈黙が過ぎてゆき
俺たちを乗せた箱は出口まで来てしまった
は、結局、黙ったままで
それでも、俺の手を引いたまま、出口へと歩いてゆく
俺は、引かれた手を、グッと引き返した

「・・・、・・・俺」

あたりは薄暮に包まれる、そんな夕暮れ
周りの喧騒を他所に、俺たちは向かい合い・・見つめ合う

「・・・俺」
「あのね、葉月くんの手、あったかいから!」

「え・・?」
「あったかいから握ってるの!」

「・・・」
「だから夏になったら、握らない」

「え・・・・・、おまえ」

は俺の声を遮るように、また、俺の手を引いて歩き出した
俺は、その手を振り払う
は少し驚いて、振り返った

「夏になったら・・・、握らない?」
「・・・だって」

「じゃ、俺が握るから・・・今から・・・ずっと」

俺は、驚いたの手を引き、グングン前に歩き出す
は、少し戸惑いながら、俺に引かれついてくる
繋がった手の温かさは、今までと変わらない

けれど
これからは違う・・・だろ?

END



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